富谷市立成田中学校
コンパクトで多様な学習環境
計画地は仙台市北部のベットタウンとして近年人口が増加の一途をたどっている富谷町成田地区の住宅地です。
このプロジェクトは成田地区のこれからも増加していく生徒数に対応するため計画されました。コンペは成田地区住民等関係者で構成される50人委員会によって設計者が選定されました。私たちの案が評価されたのは、狭い敷地を最大限有効に利用し、コンパクトな計画でありながら多様な学習活動・学校生活に対応できる空間構成でした。
造成された建設前の敷地は、部分的に残された雑木林が元の地形を感じさせる程度で、土地のコンテクストが断絶された状態で、周囲を道路と地域の調整池の急な斜面で囲まれ、中学校としては狭い敷地でした。
配置計画をする上で、敷地を有効に利用し校庭をできるだけ広くとることが最重要なポイントであり、建物はできるだけ北側に寄せ、敷地の凸凹した平面形状にパズルを当てはめるように計画しました。特に音の出る特別教室(音楽室・美術室・技術室)は別棟として敷地北西部にわずかに残っていた雑木林の中に計画し、よりよい環境での学習と校舎との機能的な関係を満足させるようにしました。
4階建ての校舎は2~4階が普通教室等の学習・生活ゾーン、1階が職員室、保健室等の管理ゾーンとなっています。
学習・生活ゾーンは、各階、普通教室2室とワークスペース・ロッカーコーナー・休憩コーナー・生徒便所・教材庫・水まわりがひとつのユニットとして計画されており、中央のタテ動線を挟んで、東西ほぼ対照にユニットが形成されています。ユニット化することで自分たちのスペースとして意識し、仲間で共有する空間を大切に使うことを期待しての構成としました。
図書室や特別教室は、校舎北側に配し、各階から学年のユニットを通過せずに中央階段から直接アプローチできるよう計画しています。
ワークスペースはこれから多様化するであろう学習環境に対応するために計画しましたが、そのために必要なキャスター付の家具などがその必要性がなかなか理解されずに現状では用意されていない状況であるのが残念でなりません。
しかしながら従来の廊下的な単なる通過空間ではなく、生徒たちの語らいの場、様々な活動の場として工夫されて使われているようで、以前放課後に訪れたときは、卓球部の練習場として使われていました。少々驚くとともに、予想外の使い方をするものだと感心しました。
(江田紳輔)
施設概要
- 場所
- 宮城県富谷市
- 用途
- 中学校
- 竣工年月
- 2005年3月
- 延べ面積
- 延床面積:4,972.13㎡(校舎)
体育館:1,268.39㎡
プール:870.00㎡
- 構造
- RC造 一部S造木造
- 階数
- 地上4階
受賞歴
- 2006年
- 文教施設協会 協会賞 教育環境の新設部門