東松島市火葬場
天空や地域の森と呼応し、故人と向き合う葬送空間
既存の火葬場の老朽化に伴う建替え事業として、空と山々への眺望が印象的な小高い山の頂上が新たな敷地として選定され、計画がスタートしました。
故人を偲ぶ人生終焉の儀式にふさわしい火葬場として、地域の風景や素材を活用し、会葬者が故人と向き合える「かけがえのない」空間を目指しました。
会葬者は、杉板張りの屋根が迎え入れる印象的な車寄せを抜けると、三角形の平面によるエントランスホールにいざなわれます。エントランスホールは、トップライトからの光がふりそそぐ、厳粛な中にも心のやすらぎを感じる空間を目指しました。
エントランスホールを中心に、左側が「お別れ室(告別・収骨)」、右側が「待合室」となり、杉板を型枠にしたRC打放しの壁が両者の空間を区分し、結界の役割を果たしています。
「お別れ室」は、お別れから収骨が終わるまでを遺族だけで行える個別性の高い空間であり、故人との最後の時間を心ゆくまで過ごすことができる空間です。天空から光がそそぐ印象的な空間を目指しました。
結界としてのRC打放し壁を抜けると、よりやすらぎと温かみのある待合部門となります。待合室の窓からは、東松島の山々の景観や空がのぞめ、故人と向き合う時間をつくります。
現在は採掘されていない東松島市産の野蒜石(のびるいし)を内外の壁に採用することができ、地域らしさを感じられる「かけがえのない空間」をつくることができました。
(斎藤拓也+雨宮雅明)
施設概要
- 場所
- 宮城県東松島市
- 用途
- 火葬場
- 竣工年月
- 2018年10月
- 延べ面積
- 1,359.99㎡
- 構造
- RC造
- 階数
- 地上2階
メディア掲載
- 建築ジャーナル(2021年1月)