新地町釣師浜漁港荷捌き施設・漁具倉庫
東日本大震災で被災した卸売市場の復旧です。
設計初期段階、津波被害を受けた敷地には骨組だけとなった卸売市場を残すのみで、土地の記憶を感じさせるものは何一つありませんでした。
記憶を失い、防潮堤により内陸部と切り離されたこの場所に、どのようにして記憶を継承しつつ新たな風景を創造するか、をテーマに設計を行いました。
施設の特徴である冷海水循環・製氷貯氷・冷凍冷蔵庫等の特殊附帯設備をおおらかに包含する単純な骨格・フレームで構成し、震災前、そこにあった民家や漁具倉庫を連想させるシンプルな切妻屋根のいえ型としました。
規模・構造の異なる施設群をいえ型の形態と手作業の跡が見えるコンクリート打放しや適度なムラ感のある塗装、アルミなど素材を活かした色彩で、遠景に見えるランドマークである新地発電所と呼応した、統一感ある新しい漁港の風景をつくりだしています。
大規模な予算縮小に伴う規模縮小や型枠工の不足など多くの苦難を乗り越えて竣工したこの施設が、相馬双葉地域の漁業復活の一助となることを切に願います。
(岩根 敦)
施設概要
- 場所
- 福島県新地町
- 用途
- 卸売市場
- 竣工年月
- 2018年3月
- 延べ面積
- 1,219.29㎡
- 構造
- RC造
- 階数
- 地上2階