大槌町斎場(おおつち斎苑)
故人の想いを大屋根で包み込む火葬場
安渡地区にある現・火葬場は昭和45年に竣工してから50年以上が経過し、施設の老朽化や維持管理費の増加を受け、現代の利用者のニーズに対応した新しい火葬場の建設が求められました。
基本的な考え方として①内なる静謐な葬送の空間を創る/②大屋根で覆われた一体感のある構成/③維持管理しやすいコンパクトな施設計画の3つを掲げ設計を進めていきました。
外部には景観・視線に配慮したスクリーンとなる美しい壁を設け、周りには植栽・景石を計画し斎場としての修景に配慮しています。建物前面には大きな車寄せ空間が広がり、建物から約10m跳ね出した大庇は会葬者を優しく迎え入れます。
内部は「到着~告別~お見送り」という地域の葬送儀式の流れに合わせた室配置とし、中央の収骨室を取り囲むように各室を配置し各々を緩やかに仕切ることで、儀式や故人に対する気持ちを集中できる独立性の高い構成としながらも一体感のある空間を目指しました。
天井の木ルーバーは外部から内部まで連続し、上部のトップライトや間接照明によって、木ルーバーの隙間から儀式空間に木漏れ日のような温かい光を落とします。収骨室は故人が天に昇るイメージから空が抽象的に見えるつくりとし、故人との最後の別れに相応しい会葬者を優しく包み込む空間デザインとしました。待合部門は木を多用した温かみのある空間とし、会葬者が故人を想いながら心を落ち着かせることのできる安らぎの空間となるよう計画しました。
この新斎場が大槌町の新たな復興の象徴としてこれからも末永く使われ続ける施設となることを心から願っています。
江田紳輔+本間亜門
施設概要
- 場所
- 岩手県上閉伊郡大槌町安渡
- 用途
- 火葬場
- 竣工年月
- 2021年9月
- 延べ面積
- 936.14㎡
- 構造
- RC造一部S造
- 階数
- 地上2階