双葉町産業交流センター
双葉町の復興を牽引し、新たな産業と交流を創造する
2020年3月に供用開始された常磐双葉インターから伸びる県道井手長塚線・長塚請戸浪江線(通称「復興シンボル軸」)を東に約6㎞,双葉町復興まちづくり計画で整備された「中野地区復興産業拠点」と双葉町・浪江町にまたがり整備される「復興祈念公園」の結節点に敷地は位置する。同一街区には県有施設の「東日本大震災・原子力災害伝承館」がある。
施設は産業部門(貸事務所・貸会議室・レストラン・休憩室)と交流部門(物販・飲食機能)で構成される。未だ避難指示区域が町の大部分を占める双葉町において,貸事務所・会議室等の産業支援と日用品の小売施設や食堂等の生活支援をすることで,就労者・来訪者・町民の需要を満たす総合的な支援拠点を目指している。また,様々な人が広く利用できることで就労者相互はもちろん,ここを訪れる全ての人々の交流を生み,産業と地域をつなぐ交流拠点となることを目指している。
東西に長い敷地ゆえに必然的に長くなる建物に,南側に貸事務所機能を,復興祈念公園・伝承館とつながる北側に物販・飲食機能を配置している。利用しやすい下層階に大勢の利用が見込まれる会議室・フードコート・レストランを配置している。将来的には土産物販売やコンビニも出店が予定されている。2~4階南側は整形な貸事務所で最大12.9mの柱のない大空間としている。そして最上階には町内を一望する展望スペースがある。建物は各機能をそのまま形態として表現し,産業と交流から想像される印象を素直に具現化している。復興祈念公園・伝承館とつながり,人々を迎え入れるガラスの大屋根を鉄骨造の軽やかな構造体が支え,工業製品をなるべく「素」のままで採用することで産業と交流を想起させる意匠・仕上げとしている。
基盤・インフラ整備と施設設計・建設が同時進行で行われ,刻々と変化する設計与条件に対応し進めていく,かなり特殊な,ある意味では極限状態のなかで産業交流センターが結実したのは,ひとえに町担当者をはじめとするこの事業に関わる人々の思いの強さであり,ご尽力の賜物以外の何物でもない。関係された全ての方々に敬意と感謝をするとともに,この事業に微力ながら関わられたことを誇りに思う。この新たな産業交流センターが中野地区の産業拠点としてだけでなく,大屋根下のひろばや大会議室で新たなイベントや伝統行事が開催され,地域コミュニティの再生と活性化を促すきっかけとなり,復興のシンボルとなることを切に願っている。
(岩根敦+小林誠)
施設概要
- 場所
- 福島県双葉町
- 用途
- 貸事務所、飲食、物販施設
- 竣工年月
- 2020年6月
- 延べ面積
- 5785.61㎡
- 構造
- 鉄骨造
- 階数
- 4階
メディア掲載
- 近代建築(2021年1月)
- 建築ジャーナル(2021年1月)