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私たちの働き方

  • 働き方改革
  • 2019.09.06|宮腰紀子
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私は何度目かの転職を経て、東日本大震災直後に入社し今年で8年目になります。初日の印象は、荷物山積み、電話は鳴りっぱなし「今までで一番ひどい・・・」でした。「色々と古い」というのが率直な感想で、昼夜問わず長時間働くことが、当たり前になっている状況にはただただ驚きました。

設計業界が長時間労働だと言われても、「はい。そうですか」とは全く思えません。100時間以上も残業し元気に働いているようには見えなかったし、健康でいられるはずがありません。

就業時間に居眠りをしようが、遅刻をして来ようが、人が辞めようが、話題にもならない・・・。これで社会貢献?良い仕事?どんな風に?という疑問だけが膨らんでいきます。

 

震災復興業務に追われていたあの頃、余裕なく、それぞれが目の前の業務に身を削るように取り組んでいた事は充分わかっていたつもりです。ですが、この状況をどうにかしないと命に関わる・・・と勝手に苛立ち不安にもなり、悶々と過ごしていました。

・心と身体が健康な状態で仕事ができること

・仲間と良いコミュニケーションを取ること

・働く場所が快適であること

あれこれ考えて、結局行き着く答えは、やはりシンプルなものなのです。

 

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ある時、「この状況、皆さんどう思っていますか?私はずっと違和感を感じています。」 と発信してみました。一気に空気が変わったような、静かな中でそれぞれの強い感情が私に向かって飛んでくるような・・・あの瞬間のことはきっと忘れない。大なり、小なり反応があり、みんなが思うところを改めて知ることになります。

 

出来ることから少しずつという思いで、2015年6月から残業時間の集計を開始し、全社で情報を共有することにしました。形を変えながら今でもその取り組みは継続しています。(決算期平均)

2015/10~2016/9 76:50時間

2016/10~2017/9 68:20時間

2017/10~2018/9 44:01時間

残業時間を減らすことは、ゴールでも何でもありません。ようやく成果が見え始めてきた、そんなゆるやかな変化です。現状を可視化することで意識は間違いなく変化します。

 

3 大きいようやく働き方に意識が向き始めた2017年3月、自社で働き方ワークショップを開催することになりました。

自分達で企画し準備をすすめ、いよいよ開催という時に、労働基準監督署の査察を受けることになります。思い返すだけで、青ざめてしまうあの時期。図らずも同じタイミング。一気取り組まざるを得ない状況におかれたことが、結果的に私たちの取り組みを加速させてくれました。

 

労働基準監督署の査察後は、是正報告のため、数ヶ月を要しました。未払い残業代の精算、過去の勤務実績の整理、労働安全衛生委員会の発足 等々 今まで、手をつけられずにいた課題にしっかりと真正面から向き合えたからこそ、今があるのです。

 

働き方ワークショップでは、それぞれが抱えている問題点、感じていること、ここぞとばかりに出し合い、全社で共有しました。それらを分類し、チーム毎に成果を出す!という意識で取り組みが始まりました。あの時の一体感というか・・・ようやくスタート地点に立てたような高揚感。

 

“質の良い仕事” をするためにはどうしたら良いのか?“目指す組織のあり方”は?少しずつ、そんな対話が起こりはじめていく、嬉しい変化を目の当たりにしたことは、本当に得がたい経験です。描くビジョンが明確になり、個を生かしチームで成果を上げられたことで、チームマネジメントにも良い影響を及ぼしています。

 

私たちは、常に変化し続けています。何度も何度も、最善の選択をするために話し合ってきましたし、それはこれからも続きます。経験値も国籍も、異なった35名の私たち。それぞれの個性が発揮され、知恵を惜しむことなく出し合って結集させること。

それが 『 Spirit Of Place ・・・  その場所(Place)の持つ歴史や風土、文化、人… 土地固有の精神(Spirit)を継承し、対話を通じて、共感を呼ぶ建築を育み、社会に貢献すること』という、私たちの目指す理念に、立ち返ることになるのだと気付きます。

 

私たちの役割を再認識し、これからも“その場にかけがえのない建築”を創り続けます。